■ 季節を感じるイカ
どんなにありふれた食材でも、天然物であるかぎり、旬はあります。たとえばイカですが、刺身や握りにしてしまうと、いつでも・どこでも食べれるものの代表選手になるかもしれまんね。
ですが、ひと口に「イカ」と申しましても、種類はいっぱいあります。季節によって、またお出しする料理によって、使うものは変わるんですよ。
今、旬を迎えてるのは「白イカ」です。「ケンサキイカ」とも呼ばれるこのイカは腕が長く、夜釣りや定置網で主に獲れます。どちらかというと上品な味で、鮮度の良いものは、身がかたく歯ごたえがあります。
イカソーメンにしたり、細造りにして塩とスダチで頂くと美味しいです。また、小さい白イカのときは、さっと煮付けたりします。
そして、秋に旬を迎えるのが「秋イカ」。別名「アオリイカ」ともいいます。ズドンと丸長い形のこのイカは、釣りをされる方はルアーなどで釣られるようですね。
オススメは一夜干しの焼や天麩羅で、もちもちして甘みが強く、とても濃厚な味です。小さいものは、ボイルして生姜醤油で頂くのも美味いです。
──2008.08.18
■ 「阿蘇海」とその恵み
天橋立によって、宮津湾から隔てられている内海が、阿蘇海(あそのうみ)です。雪舟庵のカウンター正面の窓から見えるのが、この阿蘇海です。

凪いでいるでしょう。昼にだけ、山から吹き降ろす風によって海面に波が立つのですが、基本的に阿蘇海はいつも凪いでいます。波が立たないことから、阿蘇海に生息する生き物達は、外海のものよりも、運動量が減り、脂がのってきます。
阿蘇海で採れたウナギは、腹が黄色いのですが、これは脂がのっている証拠です。その他にも、阿蘇海の食材は、味が濃い、癖がきついといった特徴があります。雪舟庵では、阿蘇海の食材に合った、素材を引き立てる調理法を心がけています。
■ 貝類について
阿蘇海は貝類も豊富な海です。ハマグリなど、味が濃くておいしいですよ。
最近、放流に力を入れているアサリも、お味噌汁だと分かりづらいかも知れませんが、お吸い物だと、味の違いをはっきり分かってもらえると思います。
人気のクロクチ(写真)も、もともとのあくの強さが、加熱処理によって、癖のあるいい味に仕上がります。てんぷら、フライにも向きますが、おすすめは、タマネギを入れてしょうゆ味でさっと炊く調理法。クロクチのだしがタマネギにしみこんで、何とも言えない、いい味です。ちなみに、クロクチの一番おいしい旬は、ウナギと同じ土用の頃です。
■ 常に旬の地物を
雪舟庵では、野菜も地物を使っているんですよ。タマネギは、最近では外国種が多いですが、ここで採れるタマネギは純国内種。甘くて、火を入れたり煮炊きしてもクタクタにならず、歯ごたえがあってしゃきしゃきしています。地元の農家から直接仕入れる野菜は、環境にも体にも優しいんです。
旬のものを使うという主義ですので、いつでも全ての食材がそろうわけではありません。また、クロクチや鯖寿司のサバのように仕込みに時間がかかるものもあります。
例えば「鯖寿司が食べたい」など、特別なリクエストがあれば、あらかじめ(できれば数日前までに……)電話などでご確認いただけるとありがたいです。
──2006.10.10
■ 絶景・天橋立を望む地で
この場所を選ぶのに、2年もかかってしまいました。美しい日本三景の一つと対話しつつ、地物のとれたてのお魚をじっくり味わってもらって、お客様には、ホッとくつろいでいただける時間を提供したいと思いました。そのこだわりの精髄が、"癒し"です。あくまでお客様が主人公となる空間づくりを心がけました。
雪舟庵、と名前を決めた段階で、インスピレーションが山のように湧いてきました。天橋立を水墨画で描いた雪舟も、この景色をきっと見ただろうと思います。だから、その当時から変わらぬこの素晴らしい景色を、お客様にも是非見ていただきたいですね。
真っ青な空と、海面を飛び跳ねる魚が見られる夏の景色もいいですが、個人的には、雨降りの時もお勧めです。天橋立の松林にガスがかかって、ぼうっと煙った風情が、まさに雪舟の水墨画みたいで枯淡な味わいです。これから冬になって、雪が積もったらまた違った味わいになるのではないかと思います。
■ くつろぎのインテリアへのこだわり
店の外装は、モダンでありながら品のある和風スタイル。黒と白を基調とした落ち着いたインテリアも、雪舟の水墨画のイメージからです。実は、設計段階で、設計士さんには7回も図面を引き直していただいてご苦労をおかけしましたが、おかげで納得のいく素晴らしい空間に仕上がりました。
入っていただけるお客様の定員も、店の規模にしては少なめにしました。わたしの目の届く範囲で上質のサービスを提供したいと思いました。主役はやはり、お客様と景色ですね。わたしどもはあくまで裏方です。店内でもあえてBGMをかけていません。お客様が景色と対話するのに、音楽はいらないでしょ? あと、本当は、ダイニングスペースに棚やらコンロやらあった方が、わたしたち料理人には便利なんです。でも、棚を吊っちゃうとせっかくの景色を遮ってしまうでしょう。だから、景色を観賞するのに邪魔な物は、みんなとっぱらって、こんなにすっきり。
■ とれたての旬の食材を求めて
わたしのこだわりとして、地物の旬の食材しか使わないと決めています。
メニューは、朝、港で魚を見て決めるんです。魚が教えてくれると言いますか。簡単ですよ。見るなりパッとメニューが浮かんできます。日本料理は、素材と器が語りかけるものに耳を澄ませてやれば、あとは自然にイメージが湧いてくるものですよ。
よくお問い合わせいただく鯖ずしは、地物の鯖がない場合もあるんです。そういう時に、大阪辺りから仕入れれば簡単なのでしょうけれども、あくまで地物にこだわりたいですね。そうでなければ、わたしの料理じゃないです。わたしのこだわりなのですが、その辺りをご了承頂けると有難いです。鯖ずしは、普通、昆布で巻いたりするのですが、ウチのは一味も二味も違います。ぜひ一度ご賞味下さい。ただし、事前に必ずお問い合わせ下さいね。
──2005.10.07

